《「一寸先は闇」そういう人の明日には、嫌なことが起こります。「一寸先は光」こういう人には、次から次へと良いことが起こります。人生で不利なこと、暗くするようなことは言わない方がいい。どうせならやっぱり「一寸先は光」でしょう。》

訓練用に作られた施設を利用して、本気の避難訓練に参加したことがある。火事が想定で、階段のある建物内から、いかに安全に適切に避難できるか。
水蒸気を煙に見立て、時おり見える赤い光や叫び声、避難を促す女性のアナウンスがとてもリアルだった。目を開けても光を一切感じない一寸先は闇、そんな暗い中を1人で進む行為は、経験した訓練というものの中では1番印象に残るものだった。
知り合いに、盲目の方がいる。会えばいつも機嫌よく話をし、時事問題からゴシップネタまで、あーでもないこーでもない言いながらよく笑う。手に職を持って自営し、1人で出張もされる。着るものや食べ物にもこだわりがあり、肌艶もよく健康的だ。
その方と会っている時、私がその方の話すことに「うんうん」とうなずく程度だから、たいして会話になっていない。テレビを見たり、ラジオを聞いて笑っているのと似ている。でも、数時間一緒にいても苦にならない。その方の話を聞いているだけで楽しいのだ。
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人と一緒にいて疲れるのは、
「闇」の感情に触れるときだと思う。一見、ネガティブと混同しそうだけど、それとは少し違う。ネガティブというのは否定的、消極的であって、暗黒や暗闇を表す「闇」とは違う。会社の重役や参謀にあたる人は、かえってネガティブな思考を持つ方が向いてると言われている。
計画の失敗を予想し、問題が起きたときにどのような対策をすべきか考えることができるからだ。
この盲目の方は「闇」を持たない。持っていたとしてもそれを感じさせない。つい盲目であるが故に、その方に対して、避難訓練で感じた恐怖や孤独を思い出して勝手に同情する気持ちを持ってしまったが、それはとても失礼な事と気づいた。この方は、不自由を言葉にするけど、それを受け入れて前向きなのだ。
「そんなこと言っても始まらないからね」
「そんなこと考えてもしょうがないからね」
というのが口癖だから、その方が文句を言おうが悪口を言おうが、話の根底が前向きだから嫌みがない。とても清々しく気持ちがいい。