《気を遣うくらいなら断りなさい。信頼されたいなら断りなさい。自由になりたいのなら断りなさい。迷うくらいなら断りなさい。たとえ迷っても、ついてきてくれる人を大切にしなさい。》
誘われると断れない現代の中年世代は、
なかなかストレスの多い人生を送ってきたと思う。現代の10~20代の若者をストレスフリーと言っているわけではないのであしからず。
歓送迎会、忘年会や新年会には必ず参加、大した世話にもなっていない隣の部署の先輩の結婚式にも強制参加。4月の新入社員は夏に実施される納涼会にはすでに幹事として抜擢、先輩幹事の小間使いとなって準備やら当日の案内やら飲み物の手配、上司のご機嫌取りから酔っぱらいの世話まで、とにかく一生懸命やってきた。そして宴会の一杯目は飲めなくてもなぜか「とりあえずビール」を頼まなくてはならず、酒全般苦手だった若かりし自分にとったら「とりあえずビール」は面白くない時間が始まるのろしにすぎなかった。今思えば自分は楽しめないつまらない宴会に相当カネと労力を使ってきたと思う。
現在の若手の「いや、自分は行きません。」の、
ハキハキ断る返答には、逆にこちらが圧倒されてしまう。「その日は用事があります。」という少し嘘を含んだ断りではなく、「自分は行きません。」という清々しさ。逆に年齢的に酒を知っている大卒、短大卒だと、すでに酒の飲み方自体を知っており、酒の席を断るどころかその雰囲気に溶け込んでいる様子、その世渡りの上手さに舌を巻かされる。
どちらのパターンであっても思わず「君、強いね」と呟いてしまう。卑屈で弱気な自分はもちろん口に出さず、ココロの中で。
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そんな若者たちを「けしからん」という古い先輩もいるが、
今ではパワハラ、セクハラ、マタハラなど、コンプライアンスに基づいた世間の風潮により、昔ながらの年功序列、ゴリ押し無理難題は通らなくなった。
やるべき仕事をきちんとしていれば「けしからん」ことはない。もし、時間にルーズだったり言葉使いがおかしかったり、服装態度がだらしなければ正してやればいい。知らないことを教え、出来ないことは出来るように教えてやればいい。一度二度教えたからと言って教えた気になってはいけない。一度二度聞いただけで出来ることもあるが、出来ないことだってたくさんある。そもそも何回言ってもできない年長者だっているではないか。
新人教育、社会人として新しい人材を育てるのは、会社側の義務である。
とはいえ、こうやっていつもの業務を抱え、少々我慢しながら仏のココロで自分の時間を新入社員のために費やしているのに、新入社員は「細かい先輩だな」と言わんばかりに返事も適当、ひょうひょうとしている、ように見えたとしたら。
そして、会社の飲み会などには「行きません」と言おうものなら。
「おい、ちょっとまて。」
となる。
断られる上司側からしてみると
「いやいや、君の指導のためにどれだけ時間を使ってると思ってるんだ、そもそも君らの歓迎会なのに君がこないでどうすんの。行きたくないから行きませんとか、学生でもあるまいし、そんな非常識が通るわけないでしょうに。飲み会くらい来なさいよ、俺の話を聞きなさいよ、社会人とはなんたるかを教えたるわ」と言う気持ちになるだろう。何も知らない人に一からものを教えるのは大変だ。仕事の作業要領や営業の仕方もさることながら、会社、社会のルールも教えていく。若手が粗相すると「ちゃんと教育してる?頼むよ。」と上司からのプレッシャーもくる。結構大変なのだ。
断る若手側からしてみると
学生から社会人になるというのは、人生の転換期、環境や扱いが変わり、自分が保護される立場から完全な自立へ、大きく変化する時期だ。自分の労力が対価として支払われる給料が発生する。社会に出て働くのがどういうことか、就職活動で十分理解していたはずなのに。実際入社すると、知らないこと、知らない常識と言われるものが多すぎて疲れる。言葉使いとか身だしなみとか、結構気を使う。ちゃんとやってるつもりなのに文句言われるし。さらに飲み会なんかで説教とかマジ無理。カネもないし、ムリムリ。勘弁して。
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断られる上司の方、生まれたての社会人の指導、大変でしょう。常識もなってないし、挨拶ひとつが気になり、電話の応対にもヒヤヒヤさせられるでしょう。教えるという立場も大変なんですよね。今まで何度同じことを言ったのでしょう。本当にお疲れさまです。
断る新入社員の方、ようこそこちら側の世界へ。新しい事ばかりの毎日どうでしょうか。言われたことをやっていても、何度も同じことを言われるでしょう。社会人として給料をもらい、社会保障を受けられる身分となり、意識の変化を求められることでしょう。新しい環境でよく頑張っていると思います。お疲れさまです。
両者、毎日がんばっている。
それぞれの気持ちは最もだ。
どちらの言い分も悪くない。
もし、飲み会に「行きません」という若手社員がいたら「そっか、また明日会社でな」と返せばいいし、飲み会に参加しなかったからと言って、あなたが若手社員の指導をやめることはない。そんな事はしない。
一方若手社員は、飲み会に行かずに翌日出勤しても、またその上司の指導をもらう。
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「飲み二ケーション」という言葉が流行り、仕事以外でも酒を酌み交わし、積極的にコミュニケーションをとって人間関係を円滑にしようという風潮があった。現在もコロナ渦中で気持ちに制限がかかるものの、肯定派、否定派、様々な捉え方があるようだ。現代社会人のコミュニケーションの取り方として、この「飲み二ケーション」の現場こそがストレスの元凶になってしまうなら、それこそ本末転倒である。
人の誘いやお願いを断ったからと言って、断る方と断られた方の関係が、劇的に悪い方向に行くことはほぼない。どうしてもお願いしたかったら、頼み方を変えてみればいい。どうしても引き受けてもらいたい仕事があるなら、相手が納得する理由を説明し、できることを再度お願いしてみたらいい。断ったり断られたりしたら、次の一手を考えればいい。
断られた方は、案外柔軟に物事を考えている。
だから断る方は、断ったからといって相手に申し訳ないなどと必要以上に思い悩むことはない。
それでもあなたを必要とし、頼りにする。ついてくる人もいる。意外といるものだ。
この考え方に確信が持てるようになったのは、自分の意志に従って断る若手の姿を見て学んだものだ。若手の断る部分を認め、仕事で妥協できない部分は全うしてもらう、そういう指導のメリハリをつけると、お互い自然と信頼関係も出来てくる。
仕事やプライベートで長く一緒に居る人に気を遣いすぎるなんてことはやめよう。無駄に疲れてしまう。
気を遣うくらいなら断りなさい。信頼されたいなら断りなさい。自由になりたいのなら断りなさい。迷うくらいなら断りなさい。たとえ迷っても、ついてきてくれる人を大切にしなさい。
断る方も断られる方も、ココロ広く、ココロ豊かに。
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